パニック障害の治療
心臓がドキドキと息苦しくなり、「自分はこのまま死んでしまうのではないか?」と強い不安に襲われた経験があるかもしれません。それは人混みの中かもしれませんし、車や電車の中かもしれません。いつ起きるかわからないことが不安をさらに大きくしてしまうでしょう。
不整脈などの心臓の病気がないにもかかわらず、心臓がドキドキと息苦しくなる方は、パニック障害の可能性があります。一人で不安を抱え込まずに、ご相談いただければと思います。
■パニック障害
パニック障害は不安障害の一つです。突然心臓がバクバクして過呼吸になります。「自分はこのまま死んでしまうのではないか?」という恐怖を感じ、発狂される方もいます。しかし、パニック発作が原因で死ぬことはありません。動悸や息切れ、息苦しさで死ぬような恐怖は約30分で収まります。
ただ、「また同じようなことが起こるのでは?」という予期不安があり、発作が起きやすい時間や場所を避けるようになります。日常生活の行動が制限されるケースも珍しくありません。
また、一概に不安耐性が低い人ばかりがパニック障害になるともいえません。リラックスしている状態で不意に発作が起こる人もいます。
パニック障害の症状
以下の症状があれば、受診をお勧めします。
<パニック発作>
予期しない発作が状況などに関係なく起こります。寝ているときに発作が起こることもあります。
<予期不安>
予期不安とは、「また発作が起こるのではないか?」という不安をいつも感じることです。発作を繰り返していると、発作のないときも次の発作が心配になります。不安が原因で、仕事を辞めてしまう人もいます。
<広場恐怖>
運転中のトンネルの中やエレベーターの中などで発作が起こると、その場所を避けるようになります。苦手な場所は広場とは限りませんが、これを広場恐怖といいます。
広場恐怖が強くなると、仕事や日常行動ができなくなり、1人で外出したり人に会ったりするのも難しくなります。
原因
地震や火事など、突然命の危険にさらされると、人間にはパニック発作と同じ反応が起こります。このような反応は、生きるために人間の身体に埋め込まれているプログラムの一つです。
ただ、人によっては、命の危険がない状況でパニック発作を起こすことがあります。強い恐怖や不安を感じ、身体症状が現れます。
また、パニック発作で過呼吸になると低カルシウム血症を引き起こし、手足や口唇のしびれが出るといわれています。
■パニック障害の治療
診察
身体疾患がないのにパニック発作が起こる人はパニック障害の可能性があります。社会生活上の制限がないかどうかを含め、診察と心理検査で判断します。
治療
お薬による治療と認知行動療法を並行して行います。
<お薬による治療>
まず抗不安薬を服用し、効果があまりみられない場合は抗うつ薬を服用します。
<認知行動療法>
予期不安を少しずつ取り除き、成功体験を広げ、日常生活の行動の範囲を広げる治療です。
例えば、電車の急行が乗れない患者様の場合、各駅停車の電車に乗り、具合が悪くなれば次の駅ですぐ降りるという練習を繰り返します。陣取りゲームの陣地を増やすイメージです。
患者様のペースで無理をせず、少しずつ行動の制約を取り除いていきます。
パニック障害は根本的にお薬で治るものではありませんが、お薬が効くとパニック発作の回数が減ります。それによって自信が生まれ、認知行動療法が成功しやすい状況をつくることができます。不安にならない要素に気付いて、考え方を変え、少しずつ成功体験を作り、その成功体験が増えていくと不安も減っていきます。
受診時の注意
必要に応じて、循環器内科の受診をご案内する場合があります。